La domenica specialmente (1991) : 夜ごとの夢/イタリア幻想譚

イタリア北部のマレッキア渓谷を舞台にした三つの幻想的な挿話からなるオムニバス作品。当地の出身で、「アマルコルド」「ユリシーズの瞳」などの作品で知られるイタリアを代表する脚本家、トニーノ・グエッラが自作の短編集『砂塵』のなかの三編を脚色。ジョゼッペ・ベルトルッチ、マルコ・トゥリオ・ジョルダーノ、ジョゼッペ・トルナトーレの三人の監督が演出を分担し、音楽は巨匠エンニオ・モリコーネがつとめた。

夜ごとの夢/イタリア幻想譚のあらすじ

【プロローグ・断章・エピローグ】マレッキア渓谷の夏。谷の中腹にある記念碑。オートバイに乗った男(ジャン=ユーグ・アングラード)が赤いバラの花束を捧げる。鳥を抱えた少年(アルベルト・オッタヴィアーニ)が近づく。男は少年に、鳥を放してやれば海の向こうから仲間を沢山連れて戻ってきてくれるという。少年は記念碑の上で鳥を放す。男の姿はいつしか消えていた。

【第一夜・青い犬】靴の修理人兼床屋のアムレート(フィリップ・ノワレ)の店の前に、いつも頭に青いシミのある犬がいる。犬嫌いのアムレートは仕事も手につかない。日曜日、甥の神父の初ミサに出席しに街にいくと、犬が教会の中までついてくる。教会に犬を連れてくるなと言われてアムレートは大恥。犬は夜も吠えて彼を眠らせてくれない。ついに頭にきたアムレートは猟銃で犬を狙うが、じっと自分を見つめる犬を撃つことができない。すると別の窓から銃声がして、犬は足を撃たれて悲鳴を上げて去っていった。翌日、アムレートは血のあとを頼りに犬の行方を探し、村からずっと離れた丘の羊飼いに、犬がそこで力尽きて死んだことを聞く。悲嘆にくれて犬の墓の前に立つアムレート、その後ろから死んだはずの青い犬が吠えかける。アムレートは村の方に逃げ帰りながら、ついてくるなと言うが、その声は喜びに満ちていた。

【第二夜・特別な日曜日】ドイツ人の眼科医ヴィットリオ(ブルーノ・ガンツ)は母親がロマーニャ地方出身で、母方の祖父の屋敷に休暇にいく途中で、川原で遊んでいた神経症のマルコ(アンドレア・プロダン)と付添いのアンナ(オルネッラ・ムーティ)に会う。今日はマルコの外出日なのだ。ヴィトリオはアンナに密かに欲望を感じ、一人旅も退屈だからと二人を車に乗せる。田舎の宿屋で昼食を食べながら、ヴィットリオはマルコの語る彼とアンナの夢想とも現実ともつかぬ恋愛関係の話を聞く。そして三人はヴィットリオの祖父の館に泊まることになる。ヴィットリオはアンナにエロティックな写真のスライドを見せようとするが、いつのまにかマルコが隣にいる。無言で写真を見る三人。ヴィットリオがアンナの眼を診察すると言って二人きりになっても、必ずマルコが出現する。業を煮やしたヴィットリオは町に用事があるといって出掛け、そこからアンナに電話してマルコに内緒で抜け出せないかというが、またマルコの声。半ば諦めたヴィットリオは、男と待ち合わせをしている女ニコレッタ(ニコレッタ・ブラスキ)と会う。彼女の待ち人も現れず、ふられた同志で接吻を交わす二人の背後を、マルコとアンナの乗ったバスが通り過ぎていった。

【第三夜・炎の中の雪】真冬の雪に閉ざされた教会で、敬虔な老女カテリーナ(マリア・マッダレーナ・フェリーニ)が神父ヴィンチェンツォに懺悔したいという。神父はいぶかしがりながら、話を聞く_カテリーナは随分前に夫を失っていたが、最近息子(ブルーノ・ベンドーニ)が結婚して一緒に住むようになった。新婚夫婦はかつて自分と夫の寝室だった部屋で寝るのだが、自分の部屋はその真上、それで若い二人の部屋から聞こえる音が気になって眠れない。ある日、床の石がひとつ緩んでいるのに気づき、ついそれをどけて下を覗いてしまった。息子と嫁は全裸で抱き合っていた。それからというもの、誘惑に抗しきれず毎晩こっそり床石をはずして二人の愛の営みを盗み見ていしまう、というのだ。神父は二度と床石には手をふれないようにカテリーナを戒める。彼女は睡眠薬を飲んで無理にでも眠ることにするが、また階下から例の物音が_やはり覗き見してしまうカテリーナの目の前で、嫁は再び夫を求め、彼女に見せつけるかのように激しく抱き合う。翌朝、カテリーナは亡くなった。しばらくして、嫁は姑の墓参りにきた帰りに教会に寄り、神父に告解する。「姑の死後、夫との夜のセックスに身が入らない。実は自分は寂しい彼女に新しい生気を吹き込んであげたくて、覗いている彼女の前で一生懸命夫と愛し合っていたのに寂しい」と嫁は語った。

【エピローグ】谷の春が来た。赤いバラの花束を持った青年が再び戻ってきた。

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