Una pura formalita (1994) : 記憶の扉

失われた過去の記憶をめぐり、問答を続ける作家と警察署長を悪夢的に描いた不条理サスペンス。監督・編集は、ジュゼッペ・トルナトーレ。脚本は、パスカル・キニャールの原案を基に、キニャールとトルナトーレが執筆。撮影はブラスコ・ジウラート、音楽はイタリアを代表する映画音楽家エンニオ・モリコーネが担当。
主演は「愛の報酬/シャベール大佐の帰還」のジェラール・ドパルデュー。共演は「死と処女」の監督ロマン・ポランスキー、「ザ・ブロンド」のセルジョ・ルビーニほか。

Una pura formalita (1994) : 記憶の扉のあらすじ

静な薄明の森。突如火を吹く拳銃。何者かが雷鳴と豪雨の中を駆け抜ける_。北イタリア、トスカーナ地方。山荘の庭で文学者オノフが殺された。嵐の中を逃げた容疑者のオノフ(ジェラール・ドパルデュー)が逮捕され、警察署に連行される。深夜。殺風景で、始終雨漏りがする取調室。底冷えする部屋で延々と待たされるオノフ。弁護士を呼ぼうとしても、電話は通じず、警官たちは誰も取り合わない。下働きの老人(テイノ・チマローザ)が暖かいミルクを出すが、オノフは老人の顔にそれをぶちまけた。やがて、警察署長(ロマン・ポランスキー)が訪れた。彼はオノフを自ら尋問する。彼は作家オノフの全作品を把握しており、彼の著作の引用をまじえながら、執拗に相手を追い詰める。オノフは取調室から逃れようとするが、絶望が深まるだけだ。雨漏りは続き、やがて部屋は水浸しに。嘆くオノフに「ここは素晴しい。死んでもよそに行く必要はないさ」と語る下働きの老人。尋問は続く。署長はオノフの過去を暴き出す。孤児院出身で浮浪者だけが唯一の友だった。高校時代、“証明不可能な点”について教えてくれた数学教師、かつて棄てた情婦…思い出したくない、触れられたくない過去を突きつけられるオノフ。それは作家オノフが、おのれの半生を偽り続けるうち、いつか忘却の彼方へ去った記憶の断片だった。だが、それらは今やオノフの前に甦った。記憶と忘却の繰り返し。オノフはどこか癒された感情を覚え始める。夜明け。激しい雨も上がった。取調室から解放されたオノフ。澄みわたった朝の空気。彼の魂も浄化されていた。オノフは自分が今や死んだことを初めて知るのだった。

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